ウェルカムバック!

    BookLOG  #007

     

     

     

     人は自分の力だけで地面に立っているのだろうか。ひとり立ち。と聞こえはいいが人にもどこかに根があるはずだ。目に見えないだけでその根は生まれる直前に母体に置いてくるのかもしれない。その後、経験は人を成長させ生活は知恵を与える。人為的な嗜好、幾様にも変化する価値観の内で人は幸せを感じましたとキーを押す。しかし気質という生まれつき備わっているはずの人の根はどこかに埋もれて見失ったままである。
     先日、気質を育むことの大切さを思い出させてくれる出来事があった。一度は筆を置いたはずの金子恵が帰ってきた。復帰を祝うべき展覧会、私は気が重く初日も足を運ぶことができなかった。人が絵から離れることは理解できる。その小さなきっかけが自分にもあるとわかっていたから、ちゃんとしたサヨナラも言えなかった。会ってみると彼女はそれなりに年を重ねていた。当たり前なのに私には不意だった。久しぶりに会う彼女は自分と絵との距離感がしっかりとできていた。イラストレーターという仕事を元イラストレーターがいま選択したことを私は宿命とは思わない。そもそも復帰と呼ぶには程遠いくらいのポジティブさがあった。
     気質は自覚するものではなく自分で展開させていくもの。そう教えられた気がした。了

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