白色

    孤塁 #006

     

     紙は白いものだという考えに縛られたところがある。装丁で使う紙を何にするか選ぶ時、最初に用紙のサンプルをパラパラめくることはない。まずは今回の白は何色にしようかと悩む。どこにいても周囲を眺めていると、いくつもの白がある。白は人の気分や時間帯、照明によっても違うし、茶やオレンジなど色があっても人はそれを白と呼ぶ。一冊の本のなかにも隣り合う紙との呼応でも様々な白を演出できる。
     先ず除外したいのは漂白色。真っ白という奴だ。最近の本文紙は白く輝度の強い紙の使われるケースが、読み易いという点で増えてきているようだ。モニターなどに馴れた目では、紙もコントラストが高いほうが文字は認識しやすいのだろう。印字されているメッセージがくっきり伝わるわけだから悪い訳はない。しかし、有るか無いかというレベルでの認識と、文章を読むという行為とは違う気がする。

     他に外すのはぴかぴかの紙。つるつるくらいだったら許せるのだが何となく本の寿命が短かい気がする。
何故か本には長生きしてほしいと思う。

      「こだわる」という言葉を語源どおり〈つまらないと思っているが気になる〉としても、自分の紙へのこだわりは遠い気がする。それは私にとって理想の紙がごくごく普通の白紙であるせいだ。それでも実際紙を探し始めるとなかなか見当たらない事が多くすぐに壁に突き当たってしまう。

     講釈の少ない白い紙は少ない。了


    *「孤塁」こるい【korui】一つだけ残って助けが来る事もない砦。

     

     

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