出来過ぎたタイトル

    BookLOG #001

     

     独立し装丁家を名乗り始めた。長い間仕事を続ける、続けられる目算などない。他の人より自信があることと言えば、緑茶を美味しくいれることぐらいしかない。
     考えてみたら今までエアコンの利いた社屋の中でせっせと本を作っていただけの地方大学出身の私に、世間との接点は無い。知人といっても自分のした仕事の関係者以外にはいない。会社にいた当時は装丁という部署名はなく、名刺も出版部装丁という表記だった。

     朝から深夜にかかる仕事を一度も辛いと感じないでいられたのは、夕方くらいから本領を現す古い編集者たちがいてくれていた事が大きい。彼らとの何気ない對話が当時の自分の全てだったような気がする。

     彼らはどんなにせっぱ詰まっていても仕事の話を一切口にしなかった。そのことがどれだけ私を成長させたか計り知れない。そんな彼らの恩に報うことなく先に会社を辞めたのは私のほうだった。
     定年をむかえる編集者・川島真仁郎さんの最後の本を担当させて欲しいとかって所属していた出版社に頼み込んだ。後にも先にも私が出版社に営業をかけたのはこの一度しかない。数年して川島さんは天に召された。タイトルや著者も知らないまま営業して作らせてもらった本の装丁。話としてタイトルは出来過ぎている。了

     

     

    Share on Facebook
    Share on Twitter
    Please reload