心の可動域

    孤塁 #003

     

     クロールで泳いでいる女性。水面からL字型の肘が交互に水面から上がっては沈んでいく。怪しく思われて仕方がないが、あの肘の形を見かけるとうっとりとして足が止まる。

     理想があって形だけでなくその速度も重要である。バシャバシャやられたら興醒めで、これが期待以上にスローな場合優雅さはさらに増す。

     人に備わった装置が普通に機能しているに過ぎないのかも知れないが、自分にその泳ぎを真似することはできない。

     感情。言葉。意味。それらに荷担することのない人のフォルムがそこにある。活字や視覚表現ではトレースする事の出来ない柔軟性を人は持っている。
     泳ぐ人。水溜りを避ける人。成城石井でランチを選ぶ人。

     そのどれもにも私は劣っている。了

     

    *「孤塁」こるい【korui】一つだけ残って助けが来る事もない砦。

     

     

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